SSブログ

朽ちていった命 [本]

先日、飲み会でふとした話からでたのが「東海村臨界事故」だ。
会社の女子が読んだというこの本「朽ちていった命ー被曝治療83日間の記録ー」を借り受けた。

イッキに読んでしまった。

これは、1999年9月30日に、茨城県那珂郡東海村に所在する住友金属鉱山の子会社の核燃料加工施設、JCOが起こした原子力事故(臨界事故)で亡くなった大内さん(当時35)の被曝から亡くなるまでの治療の記録だ。しかしそれは治療と呼べるものなのか、次第に変わり果てていくその姿を目の当たりしていく家族と医療スタッフ。とても希望というものを持ち得ない被曝線量(即死でもおかしくない程の線量を浴びた)を受けても一縷の望みにかけるスタッフ、家族の姿を胸を打つ。

その事故は杜撰な管理下で裏作業マニュアルを実行する中で発生した臨海事故。
作業者たちは全く臨海が起きるなどという危険の伴う作業だと認識はなく、突然「青い光」を見てしまった。3人が猛烈な中性子線を受けその後の2人が亡くなった。突如田舎のビルに現れたむき出しの原子炉は、なんとか20時間後には核分裂を停止することに成功したが、強烈な被曝を被った作業者の大内さんのその後の83日間とは、身体の全面の全ての皮膚がはがれを落ち、爪も剥離、体内の粘膜も亡くなり出血、下痢、吐血、最後に1日に10リットルも水分が体外に流出していたという。その姿はインターネット上にもまだ残る。正視できない身体だ。

中性子線は体内の細胞、その染色体をイッキに破壊する。だからその後は正常な細胞の分裂、再生が行われなくなる。通常人間の身体は細胞の死滅と再生が繰り返されて皮膚も時間をかけて古いものは垢として剥離し、その奥から新しい皮膚に変わっていくのだが、大内さんのように身体の設計図とも言える染色体が破壊されるとその機能を失い、皮膚の再生産は行われなくなる、だから皮膚の中の肉がむき出しの状態となる。同時に血液内の免疫系も破壊され再生産が不可能となり、あらゆる細菌、ウイルスから身を守る事ができなくなる。

医療スタッフもこの、前例のない患者を前になす術が亡くなる。

失礼な言い方だが、完全な負け戦に挑み続ける人々の姿は悲しく、心が痛かった。

しかし家族は最後まで回復を祈り、病室の横で1万羽ちかい千羽鶴を作り続けた。



この事故は知ってはいたが、こんなに苦しい現実だったは、本書を読むまで知らなかった。

一言で原子力は怖いというのは簡単だが、、、まさに人智を超えた力であることは間違いない。

だが、忘れてはいけないのは、この事故も基本的な人間の驕りから来るヒューマンエラーでしかないという事かもしれない。



朽ちていった命―被曝治療83日間の記録 (新潮文庫)

朽ちていった命―被曝治療83日間の記録 (新潮文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2006/09
  • メディア: 文庫



nice!(24)  コメント(2) 
共通テーマ:

nice! 24

コメント 2

Take-Zee

こんにちは!
ちょっとご無沙汰してしまいましたね。
6月しょっぱなから真夏日、猛暑日です、
この先心配です。 
 熱中症などに気をつけてください・・・

by Take-Zee (2014-06-01 16:41) 

ツヨ

Take-Zee さん
こんにちは、今日もまったくもって暑いですね。早速僕は高熱を出してダウンしています。薬をもらってやっと楽になってきたところです。
by ツヨ (2014-06-02 14:33) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

Facebook コメント

彩湖先週に引き続き・・・ ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。