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東電OL殺人事件 [本]

しばらく前に買っていたけど、飛び飛びの読書でやっと読了。
いや〜、面白くないんじゃないんですよ。面白かったです。

先日、正式にゴビンダさんの再審が決定した冤罪事件として今では有名ですが、その実は本当に摩訶不思議な女性の堕落物語。

1997年3月に当時東京電力の企画部 経済調査室副長であった渡辺泰子さんが東京都渋谷区円山町にあるアパートで殺害された事件であり、現役エリートOLが渋谷の夜の街に立ち、道行く男に声をかけては売春するというセンセーショナルな事実が発覚するやいなやマスコミと世間を大いに賑わせたことでも記憶された。

そして15年前に取材開始されたこの本を読むだけでも、犯人とされたネパール人ゴビンダさんの冤罪は事件発生直後すでに明白だったことは驚愕だし、また彼を犯人に仕立て上げた警察の失態に対しては吐き気をともなう。この警察が生んだ冤罪には、故意が含まれるのか、ただの失態なのかは分からないけれど。



この本ではそんな事件に巻き込まれた東電OL渡辺泰子さんとゴビンダさんのそれぞれの生の交差を緻密な取材で浮かび上がらせている。そしてそれぞれの登場人物が非常に魅力的で引きつけられる。


裁判の中で証言した「すけべっこ」のサンドイッチマン、ハトフミオ。な〜んてのも興味深い人でしたよ。


また渡辺泰子さんと父の関係に言及した箇所でのこんな一節も興味深い。
「現代の市民たちは暴力で抑圧されることは少なくなったが、代わりに徹底的な評価で管理され[品質]ごとに階層分化されるようになった。この評価は内面化されて厳しい自己評価となり、自らを客体化して他者にとっての[品質の良い製品]になろうと必死になっている。」


正直、読了しても理解の及ばないところも多く、インプットされる情報量も膨大で、感じるいることも複雑であることから、感想もまとまらない。まだまだいろいろと続報を待ちたい。


この事件に非常に興味を持ったのは桐野夏生さんの小説「グロテスク」でした。
フィクションですが、明らかに「東電OL殺人事件」を題材とした物語でその異様さがインパクトあってこの事件に僕も巻き込まれた次第です。

今となっては、渡辺泰子さんは当時原発に反対の立場からの論文を発表していたことから陰謀に巻き込まれたとか、それは東電の裏金管理に関わった事からの陰謀だったなどと、多種多様な憶測がまことしやかに囁かれています。

何はともあれ、興味深い本であり魅力的な事件です。
詳しくはwikiで。

 
東電OL殺人事件 (新潮文庫)

東電OL殺人事件 (新潮文庫)

  • 作者: 佐野 眞一
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2003/08
  • メディア: 文庫



グロテスク〈上〉 (文春文庫)

グロテスク〈上〉 (文春文庫)

  • 作者: 桐野 夏生
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2006/09
  • メディア: 文庫



nice!(34)  コメント(3) 
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コメント 3

sora

警察も、中はいろいろ色々・・・あるのでしょうかね。
一般庶民で平和主義な私は、
そういうふうに思いたくないのですけれど。。。

by sora (2012-08-09 00:36) 

JUN

警察、検察の冤罪っていつもはらわた煮えくります。
真実の捜査がされず無実の人の時間と自由を奪う。
そしそそれらの全てが我々の血税によって動いている事…
by JUN (2012-08-10 06:51) 

ツヨ

sora さん
警察って、必要なんでしょうけどどの公務員もそうですが、一度思い切ってシステムの刷新がなされるべきなんでしょうね。

JUN さん
警察、検察はそういった意味で怖いですよね〜。うちの妻なんて、息子には絶対に警察官にだけはなって欲しくないって言いますからね(かなり偏った感覚ですが、、)
by ツヨ (2012-08-10 16:06) 

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