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枯木灘 [本]

中上健次作「枯木灘」を読了。

以前から読みたいと思っていた本作。
たまたまブックオフで見つけたことで読む機会を得た。

中上健次氏は戦後生まれとして初めて芥川賞を受賞し、
46歳という若さで惜しまれつつ、癌のため亡くなれた。

私小説的な要素が強く、その複雑な出自が氏の文学には色濃く反映されている。
自身の生まれがそうであることから、被差別部落を主題とした物語を形成している。

氏は、その部落を「路地」と呼んだ。


この「枯木灘」も氏の生まれ故郷の和歌山県新宮市周辺を舞台としている。
26歳の男、竹原秋幸は日々を自然の下、土方をして働いている。
汗と泥にまみれながら来る日も来る日も、つるはしを大地に打ち付ける。
土になり、風になり、草木になり、川になる、そして海になる。
秋幸を取り巻く血の繋がりは複雑であり、実の父は秋幸をフサに種付け、それと同時に三人の女を孕ませる。そして刑務所へ。
秋幸は実の父を「その男」と呼ぶ。
「その男」の血を呪い、そしてその血を受け継ぐ自分に苦悩する。
聖と俗、性、暴力、美、労働、、、
土地と血への愛と痛みを描いた大作。

読んで感じることは、その空気の清々しさ、夏の太陽の眩しさを
読みながらにして身体的に感じられるということ。
強固に孤独であろう主人公秋幸の個性が、いつもなぜか優しさに包まれているような、、、

枯木灘に行ってみたくなる。



これは珍しく読み返したくなる小説。


数年前、青山真治監督が描いた「路地へ中上健次の残したフィルム」というドキュメンタリーがあった。渋谷の当時ユーロスペースという名だった映画館へ足を運んだのが懐かしい。

路地へ中上健次の残したフィルム [DVD]

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  • 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
  • メディア: DVD


中上健次が生前、16ミリフィルムで撮影していた故郷・和歌山県新宮市で映像作家の井上紀州が「路地」を目指して車を走らせる。現在の「路地」、小説の「路地」、中上の撮った「路地」が交錯するドキュメンタリーといったもので。
これまた僕が好きな感じの「風景」が映し出されているんだな。
パリ・テキサスのような、バグダットカフェのような、セブンのラストシーンのような、、、

枯木灘に行ってみたくなる。

枯木灘 (河出文庫 102A)

枯木灘 (河出文庫 102A)

  • 作者: 中上 健次
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 1980/06
  • メディア: 文庫




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コメント 2

pandan

訪問ありがとうございました。
by pandan (2011-04-25 07:16) 

サンダーソニア

お立ち寄りいただきありがとうございます。
by サンダーソニア (2011-04-26 07:51) 

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